街角ですれ違った人の香水の匂いで、昔の恋人を思い出した。
実家の押し入れの匂いを嗅いだら、子供の頃の記憶が鮮明に蘇った。
特定の匂いをきっかけに、過去の記憶や感情がフラッシュバックする現象。これを心理学用語で「プルースト効果」と呼びます。今回は、香りと記憶の不思議な関係について解説します。
🌼プルースト効果の由来
この現象の名前は、フランスの作家マルセル・プルーストの長編小説『失われた時を求めて』に由来します。作中で、主人公がマドレーヌを紅茶に浸したときの香りを嗅ぎ、幼少期の家族との思い出を鮮明に蘇らせるという有名な描写があることから名付けられました。
🌼なぜ香りは記憶を呼び覚ますのか?
前回、嗅覚は脳の「大脳辺縁系」に直接届くという解説をしました。実は、この大脳辺縁系の中には、記憶を司る「海馬(かいば)」と、感情を司る「扁桃体(へんとうたい)」という重要な器官が存在します。
香りの情報は、この海馬と扁桃体にダイレクトにアクセスします。そのため、香りを嗅ぐと、単なる「出来事の記憶」だけでなく、その時に感じていた「喜怒哀楽の感情」までもがセットになって引き出されるのです。視覚や聴覚の記憶よりも、嗅覚の記憶の方が感情を伴って鮮明に蘇りやすいのはこのためです。
潜在意識へのアクセスツールとして
私たちの潜在意識には、普段は忘れてしまっている膨大な記憶が眠っています。中には、現在の自分の行動パターンや思考の癖に影響を与えている重要な記憶もあるでしょう。
香りは、その潜在意識の扉を開け「鍵」になります。もし、特定の香りに強く惹かれたり、逆に強い嫌悪感を抱いたりする場合、そこには過去の何らかの記憶が紐づいている可能性があります。香りをきっかけに自分の内面を深掘りすることで、自己理解を深めることができるのです。
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